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2016年5月6日

NMT inc. インタビュー特集 第20回 フォトグラファー yOU

NMT inc. インタビューyOU
所属クリエイターをより深く知って頂く事を目的としたインタビュー特集。
第二十回目は、フォトグラファー yOU(河崎夕子)のインタビューをお届け致します。

 

「透き通る中に伝わってゆくもの」 yOU

何かに心を揺さぶられた時、「とても」や「すごく」など幾ら言葉を重ねても、自分が抱く感情そのものを伝えるのは困難だ。

写真家 yOU。
yOUの作品を目の前にしたら、どんな言葉も無力になる。
作品について語ろうとすればする程、yOUの本質から遠ざかってしまう気がする。
yOUの想いは、写真のフレームを超え、鑑賞する我々に伝わってくるからだ。

子供の頃のyOUを夢中にさせたのは、写真を撮る、という行為よりもカメラそのものだった。
父から譲り受けたカメラ。
それを鞄に忍ばせて出かける、ただそれだけでyOUは満足だった。
しかしある時、街のカメラ屋さんにこう言われたそうだ。
「カメラは、写真を撮って飾る為にあるんだよ」
それを聞いたyOUは入門用のカメラを手に入れ、被写体を求めては撮るようになった。
yOUにとってカメラは、機械としての存在から、新しい何かに出逢う為の手段へと変わって行った。

ただ、yOUが撮りたいのは、簡単には写せないものばかりだった。
例えば街の持つ、色気のようなもの。
風景としての街ではなく、そもそもフィルムに焼き付くのかさえわからない、街の「存在」を写したかった。
それは、目の前にある何かではなく、あるであろう何かだ。
色、形、そして光。
それらではとても言い表す事のできない対象こそ、yOUの求めた被写体だ。
yOUは旅を通じて、それを撮り続けた。

どのようにして、yOUは世界を写してきたのだろう。
「360度の視界から何を削ぎ落とすか」
それは単に、ファインダーから被写体の数を減らしていく、という意味に留まらない。
引き算の先にあるのは、そっと浮かび上がるyOUの想いだ。
「その場にある、空気を大切にしています」
普段はその存在に中々気付く事はないが、確かにあるもの。
ふとした時に、有り難さが分かるもの。
yOUが言い表す「空気」は、直接目に出来るものではなさそうだ。

yOUは「空気」を捕える表現力を、どのようにして会得したのだろう。
「丁寧に生きようとする事かな」
例えば、料理を一から自分の手で創り上げていく時間。
慌ただしく過ぎる毎日でも、ゆっくりと流れる時を大切にする事で、自分自身と向き合うのだという。

インターネットを通じて、様々な事にアクセスできる現在。
滝の様に流れてくる情報に飲み込まれそうになる事もあるだろう。
「こんな時代に、何を感じながら生きるべきなのか」
どんな情報にアプローチしようと、そこから何を得るのかは人それぞれだ。
出来事の「本質」を自分のペースで理解しようとする事で、yOUのような感受性は育まれるのだろう。
時には、いくら理解しようとしても、明確にならない事もある。
シーソーの様に、ゆらゆらと心が揺れ動く中で我々が生きているのも事実だ。
「それもそれで、一つの答えでしょう」
そうしてまた、yOUは「空気」を作品に仕上げるのだ。

yOUは、初めて出逢う人の持つ空気すら作品として写し出す。
「相手をよく知ろうとする事で、写せるものもあるんですよ」
yOUがそう言った時、私はそれについて訊ねようとしたが、思いとどまった。
机越しに、笑い合うyOUと私。
その時、空気が変わった気がした。

これ以上、yOUの作品について語るのはやめておこう。
静けさの中からそっと伝わってくるメッセージを楽しんでみて欲しい。
☆yOU プロフィール☆

(執筆)加藤陽太郎 クリエイティブディレクター。1984年生まれ。早稲田大学大学院国際情報通信研究科修了後、日本郵便株式会社本社勤務を経て独立。
メディア関連企業の戦略策定や企画のプロデュースをはじめ、執筆や写真撮影によるコンテンツ制作を手がけている。