所属モデルをより深く知って頂くことを目的としたインタビュー特集。
第十三回目は、長谷川沙遊(はせがわさゆ)のインタビューをお届け致します。
「満たされるということ」 長谷川沙遊
「ローマは一日にして成らず」という。
何かを築き上げようとする時には、相当な努力が必要だ。
夢の為に、一歩ずつ進んできたファッションモデルがいる。
ファッション誌やCMで活躍している、長谷川沙遊だ。
困難に直面する事は幾度となくあっただろうが、長谷川は笑顔でこう言った。
「コツコツと何かに取り組むのが、好きです」
長谷川がまだ幼稚園生の時、世界的に有名なモデルを目にした。
その際、母から「モデル」という職業について教わった。
物心が付き始めた時だから、すぐに忘れても不思議ではなかったはずだ。
しかし、長谷川はモデルの存在を一時も忘れる事はなかったという。
小中学校の卒業文集に、「夢はモデル」と書いた程だ。
それから間もなくして、モデルとしての人生が始まった。
しかし、モデルとして活躍するまでのプロセスは、決して平坦ではなかった。
十代の頃を振り返って、長谷川は言う。
「あの時はまだ、自分の事がよくわかっていなかったのかもしれません」
オーディションがなかなか決まらず、悔しい思いを何度もした。
上京して間もない頃は、相談できる仲間もいなかった。
一人暮らしのせいか、体のコンディション調整も思うようにならない。
それでも、長谷川は感情をあまり表に出す事はなかった。
「プライドだけは高かったからだと思います」
人知れず、コツコツと努力を続ける以外に道はなかった。
「モデルだけを夢見てたから、それを諦めて他の事をするなんてとても考えられなかった」
その後、長谷川に転機が訪れた。
結婚し、子供を授かった事だ。
長谷川は、子育てとモデルの両立を心に決めた。
そのタイミングで、NMT inc.へ移籍した。
母親としての役割ができた事で、仕事に対する責任感も変化したようだ。
子供との大切な時間を作るべく、先のスケジュールを見据えて、仕事とプライベートのメリハリをつけるようになった。
子育ての経験も役立っての事か、徐々に大人の雰囲気も表現できるようになり、仕事の幅も広がって行った。
長谷川は、少し照れくさそうに言った。
「息子が、僕も将来モデルさんになりたい、なんて言うんですよ」
家庭を持った事で、プライベートも充実するようになった。
「日曜大工が好きなんです」
ホームセンターで材料を集め、自宅に合う家具を作るのが好きだという。
「理想の家を目指して家具を作るのって、楽しいんですよ」
お気に入りのベランダには植物が沢山並ぶ。
「中でも、クチナシが一番好きですね」
マイホームについて話している際、母としての長谷川を垣間みた気がした。
インタビュー後、私はクチナシが少し気になって、調べてみた。
長谷川は、クチナシの花言葉を知っていたのだろうか。
モデルとしてのキャリアと、理想の家を築いて行くプロセス。
一つの夢を追ってきた長谷川は、更にもう一つの夢が加わった事で変化した。
幾重にも夢を重ねた彼女が手にしたものは、クチナシの花言葉にもある「充足感」だった。
モデルとしての長谷川は、同時に母として生きる事で、この上ない幸せを手にしたのだろう。
メディア関連企業の戦略策定や企画のプロデュースをはじめ、執筆や写真撮影によるコンテンツ制作を手がけている。