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2016年8月9日

NMT inc. インタビュー特集 第24回 日下部ゆいこ

インタビュー日下部
所属モデルをより深く知って頂くことを目的としたインタビュー特集。
第二十四回目は、日下部ゆいこ(くさかべゆいこ)のインタビューをお届け致します。

「言葉が私を強くする」 日下部ゆいこ

知性とは一体、何だろう。
単に情報や知識があるだけでは、知性的とは言えない。
明らかに、その人の生き方によって知性は決まる気がする。

ファッションモデル、日下部ゆいこ。
日下部はインタビュー早々、こんな事を言った。
「知らない事を知るって、凄く楽しいですよね」
そんな日下部は、幼少時代、カリフォルニア州サンノゼに住んでいた。
母親からの影響もあり、本や映画、音楽といったカルチャーに触れながら育った。
年間100冊以上の小説を読み、映画も週5本程度見るという。
「その作品の主人公の気持ちになる事で、気づきがあるんです。生まれ変わるなら、次は小説家かな」
日下部は笑いながらそう言った。

本や映画を通じて、沢山の言葉に出逢った日下部。
そして、気に入った言葉は、手帳にメモする事が習慣だった。
確かに、日下部の手帳には多くのメモ書きがあった。
例えば、ジャン=ジャック・ルソーの『エミール』にある、この言葉。
「生きる事は呼吸する事ではない。行動する事だ」

日下部は、ルソーの言葉にあるように、行動する事で道を切り開いてきた。
10代の頃、ファッション誌の編集者から声をかけられ、出演するようになった。
「撮影がとにかく楽しかった」
日下部は当時をそう振り返った。

それから間も無くして、芸能プロダクションからスカウトされた。
演技で、視聴者をいかにして惹きつける事ができるのか。
日下部は女優業も夢中で打ち込んだ。

女優とモデルを手探りながらも両立し始めた頃。
ドラマの現場で何気なくこんな事を言われた。
「あなたは、モデルさんだからね」
一方、モデルの現場では「女優さんだもんね」。
その言葉を受け、どっちつかずの印象を抱かれているのかもしれないと、日下部は感じるようになった。
スクリーンに映る女優と自らを何度も重ね合わせてきた。
自宅には、掲載されたファッション誌の切抜きが沢山ある。
果たして、女優として生きるのか、それともモデルとして生きるのか。
自分が進みたい道はどちらなのか、改めて考える時が訪れた。

昔から、毎日欠かさずに日記をつけているという日下部。
自分の生きて来た道を、日記として読み直す行為は、自らを客観視する事だ。
沢山の名作から格言に巡り逢って来た日下部にとって、日記は自分史であると同時に、唯一自分だけが味わう事のできる作品だ。
それを繰返し読む事で、今後どのように進んで行くべきなのか、手がかりを掴もうとした。

日下部の女優に対する価値観はこうだ。
「自分の枠の中から、飛び出して行くのが女優です」
続けて日下部は言った。
「自然体で表現する事が私の求めているスタンスだって、ある時気がついたんです。だから、私はモデルとして活動して行く事に決めました」
ティーン誌で活躍していた頃を、何度も思い返したという日下部。
心の底でずっと大切にしていたのは、業界の第一歩を踏み出した時の強い意志だった。

軸にすべきスタンスが明確になった日下部。
その頃、撮影現場でNMT inc.のモデル達に出逢う機会が多かった。
この事務所なら理想を実践できるかもしれない。
そんな想いで、移籍を決意した。

新しいキャリアを創って行く為のレッスンが始まった。
これまでやってきた事は決して無駄ではないが、軸を決めた以上、求められる事は変わってくる。
レッスンでは、容赦のない指導が行われた。
日下部の課題は「大人のポージング」だ。
凛とした表現をする為のレッスンが繰り返された。
それについて、日下部はこう言った。
「改善点の多さは、成長できる可能性がある証拠だと思うようにしています」
現状を改善していく際に心の拠り所となるのは、やはり「言葉」だ。
「元気になる言葉を沢山書き溜めて、何度も読み直しています」
日下部の手帳に書き留めてあった、フランシス・ベーコンの言葉。
「人生は道路のようなものだ。一番の近道は、大抵悪い道だ」
困難が立ちはだかる時でも、これまでに出逢った言葉の数々が日下部を支えてきた。
日下部が今、目の前にしている道が、果たして「悪い道」かどうかはわからない。
だが、どんな道であろうとも、日下部はその道を必ず進み抜くのは確かだ。

日下部は最後にこう言った。
「不安になる時だってありますが、自分を信じています。それだけは絶対にぶれません」
その時の表情は、確固たる勇気に満ち溢れていた。

何故日下部が、誌面やテレビを通して、観る者を明るく惹きつけるのか。
それは、数々の名作に触れ、吸収し、実践する日下部の生き方に秘密があったのだ。
私は、このインタビューを通してどれだけ積極的な感覚を抱いただろう。
常に新しい「言葉」に出逢い、咀嚼し、実践を続ける事。
私も、まだまだ頑張りが足りない。
日下部と話して、そう思わずにはいられなかった。
☆日下部ゆいこ プロフィール☆

(執筆)加藤陽太郎 クリエイティブディレクター。1984年生まれ。早稲田大学大学院国際情報通信研究科修了後、日本郵便株式会社本社勤務を経て独立。
メディア関連企業の戦略策定や企画のプロデュースをはじめ、執筆や写真撮影によるコンテンツ制作を手がけている。