モデル事務所という仕事
前回は、モデルの仕事がどのような流れで決まっていくのかについて書きました。
書類選考だけで決まる仕事もあれば、オーディションを経て決まる仕事もあります。
では、仕事が決まり、現場に入った時、モデルには何が求められるのでしょうか。
モデルの仕事というと、ポージングや表情、スタイルの良さなどを思い浮かべる人も多いと思います。
もちろん、それらも大切です。
ただ、僕自身がモデルとして現場に立ち、その後モデル事務所を経営してきて感じるのは、現場で求められていることは、それだけではないということです。
今回は、モデルの現場について書いてみたいと思います。
01
まず、仕事の目的を理解する
広告には、商品があります。雑誌には、テーマがあります。カタログやECであれば、洋服の形や素材、サイズ感を分かりやすく伝える役割があります。
モデル自身が魅力的に見えることは大切です。でも、モデルだけ目立てばいいわけではありません。
その服をどう見せたいのか
その商品を誰に届けたいのか
ブランドが、どんな世界観を創ろうとしているのか
まず、それを理解する。
モデルの仕事は、自分を表現する仕事であると同時に、商品や企画の意図を伝える仕事でもあります。
僕は、この感覚がとても大切だと思います。
02
同じモデルでも、求められることは毎回違う
ある現場では、大きく動くことを求められる。別の現場では、できるだけ自然に動いてほしいと言われる。笑顔が必要な仕事もあれば、表情をあまり変えない仕事もあります。
昨日うまくいったことが、今日の現場でも正解とは限りません。
だからモデルには、自分の得意なスタイルだけではなく、現場に合わせて変化する力も必要です。自分らしさを持つことと、自分のやり方だけにこだわることは違います。
求められているものを理解して、その中で自分の個性を出す。簡単ではありません。でも、そこにモデルという仕事の面白さもあると思います。
03
指示を受けて、変えられるか
撮影では、細かな指示が何度も出ます。
「目線を変えて」
「身体の向きを変えて」
「デザインを見せて」
その言葉を聞いて、何を求められているのかを考え、次のカットで変えてみる。一度で正解を出せないことは普通にあります。大切なのは、指示を受けた後に変化できるかどうかです。
モデルの表現力というと、ポージングや表情のバリエーションを想像するかもしれません。
でも僕は、相手の意図を受け取り、それを自分の身体で表現できることも、モデルの技術の一つだと思っています。
04
良い一回より安定して応えられる事
撮影には、一瞬を切り取る仕事もあれば、何十着、何百カットと撮る仕事もあります。特にECやカタログでは、長い時間、同じクオリティで仕事を続けることが求められます。最初の一着だけ良ければいいわけではありません。
疲れてきても、商品の見え方を考える
前のカットとの違いをつくる
必要なら、同じ動きをもう一度する
モデルの仕事には、華やかな一瞬だけでは見えない部分が沢山あります。
僕が思うプロフェッショナルは、良い仕事を偶然する人ではなく、求められた仕事をコンスタントにできる人です。
長く現場に立つ程、この力は大切になっていきます。
05
現場でしか分からないことがある
レッスンをする。作品撮りをする。マネージャーに相談する。どれも必要です。
でも、実際の現場に入ると、それまで気づかなかったことが見えてきます。
思ったより動けなかった
指示を理解するまでに時間がかかった
逆に、自分でも気づかなかった事を評価された
そういうことは普通にあります。僕自身もモデルをしていた頃、現場で初めて分かったことがたくさんありました。
だから、うまくできた日も、できなかった日も、その経験を次に持ち帰る。それを繰り返すことが、結局いちばん大きな成長に繋がるのだと思います。
事務所にできることは、仕事への入口をつくることです。でも、現場で得られる経験まで、事務所が代わりに提供することはできません。
一つひとつの現場で感じたことを自分のものにして、次の仕事へ持っていく。
その積み重ねが、モデルとして長く仕事を続けていく力になる。僕はそう信じています。
WRITER
岡本 浩太郎 KOTARO OKAMOTO
大学在学中よりモデルとして活動し、『MEN'S CLUB』レギュラーモデルを務める。 2000年に単身で香港・シンガポールへ渡り、アジア圏でもモデルとして経験を重ねる。 帰国後は俳優に転身し、映画・ドラマ・舞台などに出演。 2013年、株式会社ニュートラルマネジメントを設立。現在、代表取締役。
2026.9.22